小谷元彦
MOTOHIKO ODANI

撮影:Takumi Nemoto
1972年京都府生まれ。失われた知覚や変容を幻影として捉え、覚醒と催眠、魔術と救済、現実と非現実、合理と非合理、人間と非人間など両義的な中間領域を探求する。また日本の近現代彫刻史の新たな脱構築に向けて、研究と実践を行う。ヴェネチア・ビエンナーレ日本館(2003)、リヨンビエンナーレ(2000)、イスタンブール・ビエンナーレ(2001)等多くの国際展に出品。立体作品のみならず多様なメディアを用い、綿密に構成された完成度の高い作品が内外で評価されている。近年の展示に個展「invasion」(anomaly 2023)、「リボーンアートフェスティバル2021-2022 利他と流動性」、「瀬戸内国際芸術祭2022」(女木島)、「百年後芸術祭」(木更津 2024)がある。
INTERVIEW
■GODZILLA THE ART 10 Questions
制作活動について
1.普段どのような作品を制作していますか?
近年の仕事は映像作品などより、ジャンルが縮⼩しつつある<彫刻>という場所に⽴ち戻り、真正⾯から⾃分にとって何ができるか、を考えて制作に励んでいます。
2.制作を通して表現したいことは何ですか?(今後の活動の展望や、現在挑戦していることなどもあれば)
2020年からスタートした『仮設のモニュメントシリーズ』は今年で No.9(ゴジラは No.6)までナンバリングできると思うので、まずは No.20まで⽬指していきたいです。このシリーズで⼟偶や仏像、特撮、⻄洋やエジプト彫刻に⾄るまで広範囲の彫刻を射程に⼊れながら、古代から近代まで遡りつつ、⾃分でミックスアップした⽇本の彫刻観を提⽰し、その全体像からこの国の彫刻とは何だったのか、そんなことを私の死後に考えてもらえるよう制作を続けたいと思ってます。 『ゴジラ』という深遠な題⽬をこのシリーズで実現できたのは、本当に幸運でした。また個⼈的な希望ですが、彫刻という場所から表現を横断し、怪獣という概念を作り出して、世間に多くの作品を知られた彫刻家である成⽥亨さんを尊敬していますので、今後、オファーがあれば、今回をきっかけにして、成⽥さんのように怪獣や星⼈のデザインをやってみたいです。
3.制作を始めたきっかけは何ですか?
20代の若い頃から、現代美術と呼ばれる場所で活動するようになったので、成り⾏きだと思います。
ゴジラについて
4.ゴジラについてどのような印象を持っていましたか?
⼩学⽣の頃から仏像と怪獣に憧れて育ってきたので、ゴジラは⾃分の記憶の中⼼部に刷り込まれた存在です。
5.これまでゴジラに触れた思い出やエピソードはありますか?
最初は雑誌の写真で興味を惹き、 その後、 映像で動く 「モスラ対ゴジラ」 のゴジラが⼟から出現したシーンで、頬の⾁がブルブル震えたのを⾒て、興奮した記憶があります。あとは親から買ってもらった⽴体物になったソフトビニールのゴジラを⾒て、触っているだけで幸福でした。
6.印象に残っているゴジラ作品はありますか?
1954年の「ゴジラ」。東宝だと「⼤怪獣バラン」、ベネディクト・プロ製作の「フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン) 」「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」は私の怪獣映画の永久⽋番のような作品群です。ここらの影響は未だに残っています。
作品制作を終えて
7.今回の作品はゴジラのどのような部分からインスピレーションを得ましたか?
特撮には着ぐるみや操演を含め、⼈の影の存在がどこかあるので、それらは⼈間が本能的に恐怖を感じる<⼈のかたち>とも通じるし、その意識をどうにか利⽤しようとは思ってました。⾃分にとっての怪獣という概念を元にして、これまでの⾃分のやってきたことを振り返りながら、感覚的に想像し、創り上げました。
8.今回の作品でここを⾒て欲しいというポイントはありますか?
ゴジラはもちろんのこと、⽶兵と⽇本兵が重なった兵⼠の姿もよくみていただけたら、と思います。そして、映画の物語を考えながら作品を作ったので、この彫刻のようなゴジラ映画があるなら、どのような物語なのかを想像して⾒てもらえると嬉しいです。
9.制作を通してゴジラの印象に変化はありましたか?
改めて⽣みの親である利光貞三⽒の功績を感じました。そのゴジラは現在に⾄るまで世界中のクリエイターたちが、時間をかけて創り上げた<様式美>になっていたことが実感出来た気がします。個⼈的には基本的な様式美を踏まえつつ、どれだけ逸脱するか、それが制作のキーでした。
10.今の時代におけるゴジラとはどのような存在だと思いますか?
戦争、⾃然災害、エネルギー問題がある限り、ゴジラは過去や現在だけを表すものでなく、未来的な畏怖と恐怖の存在でもあると思います。
あなたにとってゴジラとは?
<この国のかたち>
WORKS

撮影:Risaku Suzuki

撮影:Hidehiko Omata

撮影:Hidehiko Omata